過誤(偽陰性や偽陽性と判定すること)は検査を否定する理由にはならない。大事なのは期待値

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【これは約 12 分の記事です】

セキュリティ研修講師、防災SNSアドバイザーの佐藤英治です。

2020年3月、新型(2019年型)コロナウイルスによる様々な社会弊害(あえて「コロナウイルスの蔓延」とは、この投稿の時点では申し上げません。)

2月3月の時点で話題になっているのが、

コロナウイルスであるかどうかを検知する検査の必要性

です。PCR検査が必要であるかどうかについて意見が分かれており、否定的な方の主張の中には

検査は精度が低く、特に偽陰性(感染しているのに感染していないと判定する)のことが多いから

と主張する方がいらっしゃいます。

しかし、検査を否定する理由としては「偽陰性の確率」それ自体は理由にしないほうがいいのです。今回はそのようなお話です。

検査には必ず偽陰性偽陽性がある

偽陰性とは

ある疾患で陽性である人が、検査結果では陰性と出てしまう

こと。逆に偽陽性は

ある疾患で陰性である人が、検査結果では陽性と出てしまうこと。

です。わかりやすくいってしまえば、

感染しているのに感染していないと結果が出るのが「偽陰性」

感染していないのに感染していると結果が出るのが「偽陽性」

です。

PCR検査による2019年型コロナウイルスの偽陰性率がどれくらいかはここでは書きません。このページがいつみられるかわからず、その時の実情に合っていない可能性があるからです。

少なくとも、このブログを書いている時点ではPCR検査による偽陰性率は高めと認識されているようです。

なので、PCR検査は無意味、と言いたくなりますが、

  • 検査には必ず偽陰性偽陽性が出ること
  • どれくらいの偽陰性率が許容できるか。つまり「率が高めという基準はどこか」

を考えると、「偽陰性率の高さ」を否定する理由にすると、PCRに限らず、他の検査も否定することになってしまいます。

偽陰性、偽陽性を確率的に考える

値はとりあえずモデルケースです。実情にはあっていないでしょう。仮に「実際の陽性率と陰性率」「検査結果の陽性率と陰性率」を表でこう考えます。確率は合計で「1」とします。

検査で陽性 検査で陰性
実際に陽性 0.1 0.7 0.3
実際に陰性 0.9 0.1 0.9

 

実際に陽性のうち検査で陽性と検査で陰性の確率を足すと1になるようにしています。実際に陰性の場合も同様。

この数値では、偽陽性の確率を0.1にして、偽陰性の確率0.3よりも下げています。偽陽性が高くなければ実害ないじゃないかと思いますが、そうでもありません。

仮に100人の人がいる街を考えると

実際に陽性 10人
実際に陰性 90人

 

判断 人数
実際陽性検査陽性 正しい 7人
実際陽性検査陰性 見落とし
(偽陰性)
3人
実際陰性検査陽性 濡れ衣
(偽陰性)
9人
実際陰性検査陰性 正しい 81人

 

検査では陽性 16人
検査では陰性 84人

 

偽陽性の確率は低くしているにもかかわらず、

実際に陽性10人 < 検査では陽性16人

になります。つまり、本来対応すべき人数よりも6人多くなることになります。これが1万人規模になると600人余計ですので、確かに無駄に見えてしまいます。(偽陽性の確率をもっと低くすればこの不等式の逆転は可能)。

しかし、検査とは本来そう言うものなのです。偽陽性や偽陰性の発生をある程度は許容しないと、検査という概念そのものが否定されます。

偽陰性率よりも期待値で考える

偽陰性の否定は検査そのものの否定になります。考えるべきは偽陰性の確率よりも期待値です。

期待値は、その事象が発生する確率とその事象によって得られる利益を掛け合わせたものをすべての事象について足した合計です。

今後の式で使う記号をこう書きましょう。

判断 確率 利益損失
実際陽性検査陽性 正しい Ppp Vpp
実際陽性検査陰性 見落とし
(偽陰性)
Ppn Vpn
実際陰性検査陽性 濡れ衣
(偽陰性)
Pnp Vnp
実際陰性検査陰性 正しい Pnn Vnn

 

そうすると、期待値は

Ppp+Ppn+Pnp+Pnn = 1

の時

Ppp*Vpp +Ppn*Vpn +Pnp*Vnp +Pnn*Vnn

では、値を入れていきましょう。なお、期待値の設定には問題があるのですがそれは後述です。

こういう想定をしましょう。この想定は、正しく陽性だった時に得られる利益と陽性なのに陰性と判定された損失とを同じとしています。また、実際陰性検査陰性は取り越し苦労なのですが、手間はかかっているので ー1 と損失として考えます。

判断 確率 利益損失
実際陽性検査陽性 正しい 0.07 400
実際陽性検査陰性 見落とし
(偽陰性)
0.03 -400
実際陰性検査陽性 濡れ衣
(偽陰性)
0.09 -100
実際陰性検査陰性 正しい 0.81 -1

 

計算すると

0.07*400 + 0.03*(-400) + 0.09*(-100)+0.81*(-1) =6.19

この想定であれば、検査したほうが期待値が高くなります。

ここで突っ込みが入るのは、

確率はその値でいいとして、何故その利益損失なのか

です。利益損失の値は、立場や考え方によって変わります。

今回、不安に思う方々と客観的に考えている医療関係者とでは、利益損失の考え方が違うのです。

利益損失をどうとるか

おそらく、一般の方々は、実際陽性検査陽性(正しい)の利益損失をかなり高く見積もるでしょう。自分が助かることは大きなメリットです。そして、実際陽性検査陰性の損失を低く見積もるでしょう。何故なら、「今回陰性でもまた受ければいいから」です。つまり、陽性が出るまで理論上は終わりません。

濡れ衣の損失は若干大きく見積もるかと思います。そうするとこんな感じ。

不安に感じる方の表

判断 確率 利益損失
実際陽性検査陽性 正しい 0.07 800
実際陽性検査陰性 見落とし
(偽陰性)
0.03 -200
実際陰性検査陽性 濡れ衣
(偽陰性)
0.09 -400
実際陰性検査陰性 正しい 0.81 -1

 

0.07*800 + 0.03*(-200) + 0.09*(-400)+0.81*(-1)=13.19

一方医療関係者は、見落としの損失をかなり多く見積もるでしょう。濡れ衣は損失ですが、患者本人ほどは大きな損失と見積もらないはずです

医療関係者の表

判断 確率 利益損失
実際陽性検査陽性 正しい 0.07 200
実際陽性検査陰性 見落とし
(偽陰性)
0.03 -800
実際陰性検査陽性 濡れ衣
(偽陰性)
0.09 -100
実際陰性検査陰性 正しい 0.81 -1

 

0.07*200 + 0.03*(-800) + 0.09*(-100)+0.81*(-1)=-19.81

この設定だとマイナスになります。もちろん、シミュレーションとして恣意的に「不安に思う方はプラス」「医療関係者はマイナス」になるように設定していますが、ここで言いたいのは「利益損失の考え方が違うので、いくら過誤の可能性があったとしても、納得することはない」ということです。不安に思う人は、たとえ取りこぼしがあろうとも、自分が助かる可能性があることの利益を高く見積もり、やり直せばいい見落とし(偽陰性)の損失を低く見積もるからです。

なお、医療関係者が見落としの損失をそれほど大きく考えていなければプラスになります。通常の疾患はそう考えるでしょう。

期待値で考えていただけるように啓発する

私は、通常であれば検査をしたほうがいいと思いますが、今回のコロナウイルスに関しては、少なくとも3月の時点ではしないほうがよいと考えます。

理由は

  1. 検査のために出かけたほうが感染の可能性が高まる
  2. 現状では特効となる対策がないので、初期段階では陽性陰性どちらでも対策は変わらない
  3. 社会的に見て初期状態の人に検査を優先するよりほかの重症患者(コロナ以外も含めて)にリソースを割いたほうが良い

ためです。

1の検査のために感染の可能性が高まるなら、実際陰性検査陰性での損失は大きくなります。

病院での感染可能性を考える不安に感じる方の表

判断 確率 利益損失
実際陽性検査陽性 正しい 0.07 800
実際陽性検査陰性 見落とし
(偽陰性)
0.03 -200
実際陰性検査陽性 濡れ衣
(偽陰性)
0.09 -400
実際陰性検査陰性 正しい 0.81 -100

 

0.07*800 + 0.03*(-200) + 0.09*(-400)+0.81*(-100)=-67

2については説得が難しいかもしれません。「検査しようがしなかろうがやることは同じで意味がない」ので、医療関係者にとってはどちらもマイナスなのですが、検査を受けたい方々にとっては「やることが一緒ならうけてもいいだろう」という発想でプラスになってしまいます。そこで、3と組み合わせて、社会的な期待値で考えていただく方向での啓発が必要になるかと思います。

ここまでの計算は「個々人に対する選択の期待値」でしたが「社会における期待値」も考えていく必要があるのです。そこまで書くともっと長いブログになるので、今回はここまでで。

検査をすべきか否かは偽陰性偽陽性といった過誤の確率よりも期待値

確率的に過誤はあり得ます。過誤がありうるからという理由で検査を否定するのは検査の有効性そのものを否定します。

大事なのは期待値なのです。

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