博多高等学校の暴力動画投稿

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【これは約 6 分の記事です】

2017年9月28日に博多高等学校で、高校1年製の生徒が教師に対して暴行をふるい、その様子をとった動画がネットに投稿されたニュースが話題になりました。

暴力動画がネット流出 高校の授業中 生徒が教師を蹴る 警察が傷害容疑で事情聴取 福岡県
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170929-00000004-tncv-l40

この暴行事件について、博多高等学校も謝罪文を出しています。

博多高等学校
「生徒による問題行動と今後の対応について」

ここで気になるのは、「暴力動画をSNSに上げることの是非」です。こういう動画をアップロードすることは各種法律に抵触しないか、です。

弊社の解釈では「動画のSNSアップロードが明確に違法と言える法律は見当たらない」です。

この動画のアップロードが関連しそうな法律ですが、

  • 公益通報者保護法
  • 個人情報保護法
  • 少年法

まず、公益通報者保護法。いわゆる内部告発するものを保護する法律です。これで保護対象と言えれば、動画のSNSアップロードは違法ではない、ということになります。

公益通報者保護法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=416AC0000000122

が、この法律で保護対象となる「公益通報者」は、労働者です。(第二条2)。この動画を上げた人物はおそらく生徒なので、労働者ではありません。つまりアップロードした人物は保護対象にはなりません。

仮に動画を上げたのが労働者である教師としても、通報先には優先順位があります。通報先は

①事業者内部(労務提供先)
②行政機関(処分等の権限を有する行政機関)
③その他の事業者外部(被害の拡大防止等のために必要と認められる者)

がありますが、優先順位は①②③の順番です。動画投稿先は③に当たりますので、順序を飛ばしています。

通報の順序についてはこちら。

公益通報となるために必要な事項について
http://www.caa.go.jp/planning/koueki/tsuho-sodan/hitsuyo.html

次に、個人情報保護法。生徒の姿から個人を特定できるので、同意ない個人情報の公開に当たるのではないか、という点です。

個人情報の保護に関する法律
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=415AC0000000057

結論から言うと、抵触しません。

個人情報保護法の義務は「個人情報を取り扱う事業者」に対する義務。理念は事業者でなくても守るべきではありますが、生徒の義務ではありません。(生徒と教師の個人情報を取り扱う学校の義務ではあります)。

また、適用除外「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」に明らかに該当します。教師の方の身体が脅かされています。本人の同意なく利用することは認められます。(第十六条3の二)

次に少年法ですが、これに関しては、少年法の理念と照らし合わせると、少年の更生を阻害する可能性があるので問題はあります。

少年法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000168

が、現時点の少年法で、動画のアップロードを明確に違法と解釈できる条文はありません。

近いものとしては、第61条記事等の掲載の禁止です。

(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼヽ うヽ等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

が、これは

  1. 「家庭裁判所の審判に付された」「公訴を提起された」が、この時点では該当しない
  2. SNSが「新聞紙その他の出版物」になるか

という問題があります。2については、おそらく将来的にはネットの文章も出版物とみなすようになるでしょう。問題は1で、動画を投稿した時点では裁判に付されていないので対象外です。近い将来裁判になるでしょうが、既に情報が公開されているので適用タイミングは遅いです。

少年法の理念と照らし合わせると、動画でさらし者になることには問題があるでしょう。かと言って、動画が出ていなければ、この教師の方は場合によっては命を落としていたかもしれません。

現状の常識的判断では、教師の方の生命のほうが優先でしょう。

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